視覚認知機能

視覚機能は、外界の情報を取り入れる入力系(視力、屈折、調節機能、眼球運動、両眼視機能など、いわゆる眼窩で評価される機能)、入力された情報を処理する視覚情報処理系(形態、空間位置関係、動きなどを認識する機能」、視覚情報を運動機能(読み、書き、目と手の協応など)へ伝える出力系からなります。
視知覚認知機能は単独で発達するわけではなく初期感覚である固有受容覚、前庭覚、触覚などの情報と統合されながら発達するとされています。(川端秀仁,OCULISTA,7(40):9-18,2016)

さらに細かく分類では、両目のチームワーク(両眼視)、視線を見たいものに向ける力(眼球運動)、ピントを合わせて物を見る力(調節)といった視機能、眼に入る情報の大事な部分に注目し、不必要な部分は無視する力(視覚性注意)、形や空間を捉える力(視知覚・視覚認知)、見た情報を記憶する力(視覚性記憶)、図形などを見て書き写す力(図形構成)などの視覚情報処理が含まれ、学習のつまずきの要因となることがあります。(奥村智人,発達障害研究,39(1):49-52,2017)

「視覚情報の刺激に弱い」という特徴は「視覚過敏」の特徴とも重なります。情報の刺激がいっぺんに目に飛び込んできてしまい、注意を向けたい「自分にとって必要な情報」を取捨選択することが難しくなります。
*跳躍性眼球運動とは、ある1点から別の1点へ、視線をジャンプさせる眼球運動のことです。

このように「視覚情報の刺激に弱い」「跳躍性眼球運動が苦手」である場合、実生活上でどのような不便があるかというと「机の上で探し物をすること」、「人混みの中から人を探すこと」が苦手です。

視覚性認知の障害

視覚認知に障害があると、失認や失読、見え方の変化などの症状が現れますが、みつけにくい問題が指摘されています。本人が症状に気が付いてないかったり、認めないこともよくあります。視覚認知能力は、まだわからないことが多いのが現状とされています。が苦手など)、目と手の協応(運筆が苦手、キャッチボールがうまくできない)などの問題も存在し、LD児を含む様々な発達障害児では、このように「基本的視機能」と「視覚認知」の問題を鑑別し、適正な治療やリハビリテーションを行う必要があるとされています。(奥村智人,日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集,2009)

視覚認知と学習障害(LD)

最近では学習障害(LD)が注目される中で、特に書字の困難(ディスレクシア)について様々な要因によることがわかってきました。

漢字書字の困難の背景要因の8つのタイプ

①視覚記銘力の困難
②図形構成力の困難
③書字の継次処理能力の困難
④手指の不器用さ
⑤全般的な知的機能の困難
⑥注意力の困難、
⑦発達性読み書き障害の症状
⑧発達性Gerstmann症候群の症状

(奥谷望ら,地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)8:39-45,2011)

視覚認知における形態の分析と構成の弱さから漢字の書字に困難を抱える子どもに対し、漢字の偏や旁など構成要素をとらえる課題や、部首や漢字の意味や成り立ちを理解する課題をパズルやビンゴなどのゲーム形式で取り組む指導、子どもが指導者と一緒に漢字の覚え方を考案してかるたを作るといった活動を行い、正答率の上昇と自己効力感の促進が認められた報告があります。(佐藤公子ら,LD研究,25:230-240,2016)

定型発達児に比べ、LD(学習障害)児を含む発達障害児では、正常域知能発達であっても眼科的疾患に起因しない眼球運動の問題の出現率が高く、それが認知能力や学習達成度の低下の原因となることが指摘されています。 (Miura K, et al,:J Neurophysiology,102,1736-1747,2009)。

視覚認知の問題によって漢字の書字に困難を抱える子どもの支援方法では、書字に対する苦手意識を考慮し、いくつかの手法が考案され習得漢字数の増加や動機づけが高まるなど一定の効果も示されており、こどもの背景要因や認知特性をふまえた支援方法が求められます。(加戸陽子ら,関西大学「文學論集」66(3):173-191,2016)

<視覚認知の問題によって漢字の書字に困難を抱える子どもの支援方法>

・ゲーム形式の学習法
・漢字の構成要素を言語化して想起する手掛かりとする手法
・トークンエコノミーの併用
・ICT機器を活用した学習法

視覚過敏

視覚とは同時に大量の情報を受け取ることができる(約80%)感覚で、視覚過敏がある人はあたらしい場所や視界の変化を恐れる傾向があり、初めての行事や場所などの日常と異なる出来事があるとパニックになる場合があります。これは視覚の過敏性と視覚認知や視覚記憶のよさがあるとされています。